八味姉妹の部屋

文芸ユニット。只今、エッセイの勉強中です。

小説

小説「カレーライス」 御理伊武 著

最後の夕食をカレーライスにしようと言ったのは私と彼とのどちらからでもなく、冷蔵庫に玉葱とにんじんの切れ端とすっかりやわらかくなってしまったじゃがいも、冷凍庫に残った一握りの細切れ肉があったからだ。 同棲していたアパートの一室から私は出て行く…

「雨」高柳 龍 著

「雨に濡れるこころ」 小降りの雨が陽射しに映える。さすがに濡れるだろうからと愛用の大傘を先程から差している。 昨夜はゼミの仲間と浴びるほど飲んだ。元々酒精に弱く途中で正気は吹っ飛んだ。依然、酔いが頭に渦巻いている。日曜日だが偶には独りのんび…

「夏服」御理伊武 著

何度か目覚まし時計のけたたましい音を夢の中か起きる気力のない現実かで、やり過ごした私は、最後のアラームを止める。十分間に合う時間に最終アラームは設定されているが、それでも急がなくてはいけない。 昨日洗って干したままの白い制服はまだ湿っている…

「学祭」御理伊武 著

学祭ほど陽キャラと陰キャラの差が付く期間はないと思う。 陽キャラとは社交的で交友関係も広く、何事にも積極的で明るく楽しくいつも友達と過ごしているタイプだ。その反面、陰キャラは居ても居なくても分からず、気が付けば校舎の誰も来ないような忘れられ…